2017年9月1日

靴作りは、靴だけにあらず

この夏、九十九里の白子町にある小高善和靴工房にて、チャッカブーツを制作していた。
小野十三郎賞の受賞の記念に、自分で靴を作りますと伝えて早10か月、あやうく「作る作る詐欺」になりかけていた約束を、ようやく果たせたのである。

倉庫を改造した手作りの工房は、ミシンや工作機械のほか、小高さんの好きなもので埋め尽くされ、どこを切り取っても絵になる。





本番の靴作りの前に、まずは練習をかねて仮合わせの靴を一足(つまり左右の靴を)制作。そこからデザインやフィット感などを微調整していくのである。ちなみに撮影は、持参した一眼レフに夢中の、あるじの小高さん。イスの脚にピントを合わせる高等テクニックで、我々弟子と毛穴のプライバシーを守ってくれているのである。


お手本にしたのは、フランスの高級靴、ピエール・コルテ。まったくの物真似では面白くないので、筒高や曲線などをあれこれいじくっている。緑の内革は、汗をよく吸うピッグスキン。


そして完成。
使用したのは、ふるさと姫路のタンニンなめし、なかなかデリケートで傷つきやすく、作り手とはまるで正反対なのである。


ヒール部分の三角ステッチと白丸は、姫路城の漆喰と狭間(さま)をイメージしている。中敷きには、詩集の題名である「919」の刻印。



タンニンなめしは、はき続けることで育っていく革。つまり一生ものの、友人であり、息子の誕生なのである。ありがとう、小高さん。いい夏の思い出になりました。